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2002/10
空き巣にご用心
今年75歳にして社会的地位から開放された父は、
ひと月の半分は東京で半分は星の観測のため山の家で過ごす。
父が留守の間、わたしや弟がときどき東京の家を覗き、郵便物などのチェックをする。
このときは、何故か間が十日開いてしまった。

空き巣なんて、家の周りをきちんとしておくとかしか注意していなかった。(だらしないと狙われやすいんだって)
住宅街にしてはかなり人通りのある道路から庭を挟んで家が見渡せるので、安心していた部分もある。
新聞は止めてもらうのだけれど、郵便物が溜まってしまうのが、難。

居間の電話の横に郵便物を置きながら、ふと横の窓のガラスにヒビが入っているのがカーテン越しに見えた。
その横の棚を見ると、捨てられるのを待っていたはずのCDラジカセの分だけぽっかりしている。
「やだ、"入られた"の? おとうさんが捨てたの?」
引き出しをあけると、小銭がなくなっている。
裏口の鍵が開いている。
でもパソコンのある部屋を覗くと、ある。版画なんかも。

二階へ。
わたしの(いた)部屋の鏡台の上に引き出しの中身が置いてある。
「あーあ、やられたんだ」
他のおもちゃみたいな指輪とともに、ひとつだけ置き残してあった母の形見の指輪の箱がからになっている。
ようやく確信は出来たが、なんとなく現実感がない。

父の部屋へ。
たたみのうえに銀行の封筒が落ちている。
重要にものをいれている場所を覗いたが、何を盗られたものかわかるわけがない。
(本当に大切にものは銀行に預けてあるはずだし…)

まず山の家に電話、父は…出ない。(このこともあって後日、主義をあきらめお互いに携帯電話を持つ)
しかたがないのでお隣のハーブ屋さんに電話して、父をみかけたら電話をするようにと頼む。
弟に電話するけれど、つかまらない。

で、次が初体験。110番。
「事件ですか、事故ですか?」
「空き巣に、入られた…みたいなんですが、この家の者ではないので、被害がよくわからなくて…」
なんか、お皿を割っちゃったけれどどう思います?…レベルの口調。


係の人が到着するまで30分。この遅さは、わたしの気のない口調のせいなのか?
でもこんなささいなアクシデントに3人もきてくれるなんて、申し訳のないような。
この間、わたしはずっとうろうろと歩いていた。
知らない人間が歩いた家に、腰を下ろすことができなかった。
それから警察、普通の地味な車でのさりげない訪問です。パトカーなんてきません。

すごいよ、鑑識。
わたしが騒がないせいか、こんなんにいちいち取り合ってたらキリがないせいなのか、犯人検挙というより報告書のための手続きなんだけれど。
「窓を割ったけれど、手袋がすべったあとがガラスにありますから、開けられなかったんじゃないかな。ホラ、ここにこの角度で足をかけた跡はあるけれど。窓をからだが通過したらね、中のガラスの破片がもっと乱れるはずだし」
「この窓は、あの家から見える位置にあるし?」
「そう、たぶん1、2分で諦めたんだと思う。で、裏口に廻ったら鍵が開いてた…閉め忘れてたんじゃありませんか?」
「すみません。それは住んでる本人にきいてみないと」
「ドアの横に燃えないゴミの袋が置いてあるんですよ。一度戸締りをしたあと、ああそうそうって家の外にだしたんじゃないかなあ。それとね」
キッチンの床に懐中電灯を置いて照らしてくれたが、わたしには見えない。
「こことここ、3箇所にあしあとがあって、家の中に向いているんですね。これが出て行ったときのものとは考えにくい。かなりでかい男ものの靴です。たぶん、このラグの上で脱いで靴下になったんでしょう」
「じゃ施錠ミスということで?」
被害届けをノートパソに打ち込んでいた人が確認する。
わたしの頭の中に、今年のデータとかなんとかの円グラフがかすめる。本人不注意に1件追加。

この頃ようやく父が電話してくる。
子機を片手に家中で会話するけれど、これといって何を盗られたのかお互い要領を得ない。
「今日中に帰ってこれる?」
「いや、今夜は生徒たちが泊まっているから(山の家はときどき合宿所と化す)明日だな」
「じゃ、後日改めて被害届けを出すかたちにしてもらう」

ごめんなさい。お茶もおだししてなくて。
「いえいえ、おかまいなく」
今、お入れしますね。

「さて被害届の金額の確認ですけれど」
「はい?」
「まずCDラジカセ、いくらぐらいのものです?」
「いくらって、あの、ほんとにゴミなんですよ。壊れていたの」
「じゃ、100円、にしときます? 指輪は?」
「母のはメノウの…いくらなんだろ。たいしたものではないはずなんです」
「5万? 10万?」
「10万はしないんじゃないかなあ。こんなことをいうと、母に怒られるかなあ」
「被害総額、今のところこんなもの、ですかあ?」
「せっかく入ったのに、お気の毒だったわねえ。ラジカセ、重かったでしょうに」
「追加するものが出てきましたら、交番のほうにお願いします」
すっごく小型のプリンターから、作成されたての被害届けが出てくる。すごいーと感心しながら、拇印。

父から、再度電話。
「生徒たちに、わたしたちはいいから、先生早く帰らなきゃダメですよと言われた。これから帰る」
はいはい、じゃあこっちの家で待ってるから。途中気をつけてね。

「念のために犯人の指紋が取れるか、この封筒をもらっていきたいのですがよろしいでしょうか。で、候補を消すためにあなたの指紋もほしいのですが」
ふーん、これでわたしの指紋も登録されちゃうんだ? 悪いことはできなくなっちゃうのね。
「いえいえ、これは参考資料です。用が済めば破棄されます」
(ほんとかな〜)

指紋を採られる。これがまた、興味津々。
わたしは面倒なので手を突き出し、全部やってもらう。(内心、苦笑してただろうなあ)
指を特殊な白い石の上にすべらせたあと、特殊なペーパーのうえに押し付けると、みるみるうちに指紋が浮き上がってくる。
にしても、指紋を採られるって20種類くらいパターンがある。大仕事さ。

おまわりさんと話すために椅子には座ったけれど、
去られるとまた、座っていられなくなる。
うろうろうろうろ。
そうか、おとうさんの夕飯、つくろう。
買い物に行って、そのあと、
気がつくとふたりで食べきれない量と種類の料理をしてたのでした。
料理ってからだが覚えているものだから、考えないでいたいときには向いているらしい。
動転している意識があまりなかったけれど、実はやっぱりすごく動転してたのだなあとようやく自覚。

後日、友人いわく、それでも笑い話ですんでよかったじゃない。
知り合い(九州の大富豪)は強盗にはいられて、縛られてさるぐつわをかまされたから、おかあさんと娘さんが精神的なショックから二度とたちなおれなくなったっていうもの。

で、家に戻った父と一緒に見て廻って、夕飯たべて。
わたしは自分の家の電気もパソコもつけっぱなしで来てしまったので、申し訳ないけれど泊まらずに帰る。
かなりたってから、父から電話。
「おかあさんが買った記念金貨銀貨、おまえの家にある?」
あー、あそこになかったよね。うわっ、悔しいかもっ。

ようやく被害金額に11万ほどがプラスされ、
なくなった母にはかなり申し訳ないけれど、
不法侵入者にはちょっとはオシゴトになってよかったねえと、思わずつぶやいてしまったのだった。
おいしいものでもたべられた? 
だったら、それでよかったよ。

  

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